2014年4月5日土曜日

白ゆき姫殺人事件 映画感想 ~情報化社会の裏の顔を描くサスペンスホラー~

今回は映画レビューというか、映画感想です。
今回は邦画の「白雪姫殺人事件」です。
白雪姫殺人事件 映画レビュー

採点・・・75点

美人OLが殺される事件が発生。
テレビ関連の仕事をしている赤星(綾野剛)の元に電話が。その知り合いは、事件で殺された美人OLの同僚・知り合いでもあり、「その事件で警察から事情聴取された」というところから物語が展開していきます。
彼は、特ダネを掴むチャンスと言わんばかりにその事件を調査、取材していきます。
赤星が、電話で聞いたことをツイッターですぐさまつぶやいていく姿は、他の人が知り得ない情報を自分が持っているという「優越感」や、「認められたい」、「一目置かれたい」という欲望が先行してしまい、既にモラルが欠落している様子が伺えます。

その電話の情報を元に、関係者に取材を進めていき、疑わしい人物である「城野美姫(井上真央)」にスポットを当てて、ワイドショー番組の特集を制作していきます。

この作品、犯人や犯行の動機などの真相については、驚きの要素はなく、至ってシンプルなものです。
けれどもこの作品の怖いところは、そんなシンプルな事件の背景で、話題性だけが大きく膨れ上がったり、事実と異なる憶測や、噂が飛び交っている状態になってしまったということです。

それのきっかけとなるのが「テレビ取材・報道」「ネット」な訳です。

「テレビ報道」などのメディアは、現代社会では必要不可欠であり、最新の世界情勢、色々な情報が配信され、人々の関心、注目度も高いものです。

「ネット」は情報収集が出来る上に、自分から情報を発進したり、様々な人々とコミュニケーションの取れるツールです。

どちらも上記のような「良い面」も有るのと同時に「悪い面」もある訳です。

「テレビ報道」であれば、間違った内容であるにも関わらず、配信された情報は瞬く間に広がり、多くの人びとが「信じこんで」しまう面。

映画中盤で、赤星が取材テープを番組用に編集している場面で、隣にいたADが「この人達、本当のことを言っているんすかね」という言葉を発する場面があります。
赤星はそんな言葉にも耳を傾けようともせず、番組用の編集を続けています。

「テレビで情報を流す」という、大変重く責任のかかる仕事をしていながら、証言者の話が事実であるかどうかすら確認しようとしていない訳です。

「ネット」であれば、機密情報を簡単に流してしまったり、すぐさま誹謗中傷が繰り広げられたりする面。
テレビの報道を見た視聴者が「城野美姫」について本名がバラされ、顔写真まで掲載されて、身勝手な批判や疑いが繰り広げられていきます。

「テレビ報道」「ネット」どちらにも「表の顔」と「裏の顔」が混在していると言えます。

「表と裏」と言えば、殺された美人OLである三木典子(菜々緒)も同様です。
彼女は美しく、誰からも注目される華やかな「表の顔」を持っていると同時に、気に入らない人物は潰していこうと、陰湿な行為を繰り返す「裏の顔」を持っています。

「裏の顔」に注目すると、どれも絶望してしまうものの、城野美姫のことを信じていた「親友」は希望の光りとも言えます。
そう、希望の光を与えてくれるのもやはり「人」な訳です。

「何かいいことありますよ」

そんな城野美姫のつぶやきには、情報が錯綜され、情報に翻弄される現代社会の中で、これからも前を向いて進んでいくという意志が感じられるように思いました。彼女にもわずかながらに希望の光りが見えていたのかも知れません。

役者については菜々緒さんについては、美しさという一面は映画の中で充分引き出されていたものの、陰湿で意地の悪い女を表現する役としては、その力量がまだまだ不足しているように感じました。

井上真央さんについては「地味なOL」という、女優が敬遠しがちな役どころを、その通りに演じており、「地味で華がなく自身がない」感じが充分出ていたように思います。

「サスペンス」というジャンルで観ると、若干物足りなさはあるかも知れないものの、そうではない部分が作品の主題という点を承知していれば、実際に起こりうる、或いは起こっていることを描いているという点で評価できる作品だと思います。

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