2015年3月21日土曜日

スズキ アルトターボRS試乗レビュー

アルトターボRS パールホワイト

スズキのターボRSが発売されました。
早速試乗させてもらったので、今回はアルトターボRSの試乗レビューというか、試乗感想についてまとめたいと思います。
試乗したのは「FF」モデルになります。

タイヤ
タイヤはブリジストンのPOTENZA RE050Aです。
「POTENZA」がスズキ株式会社の「アルトターボRS」に装着
タイヤサイズは「165/55R15 75V」です。タイヤにもしっかり投資がなされている印象を受けます。

ドライビングポジション
ステアリング調整はチルト調整のみです。シートは前後調整と、高さ調整(シートリフター)が装備されています。
ステアリングのテレスコピック機能はありませんが、ある程度しっかりしたポジションが取れると思います。

運転席周り
シートはやや柔らかめな印象です。また、シートの厚みが全体的に薄い印象を受けます。見た目こそ違えど、材質などはベースのアルトと同じものなのではないかと感じます。
ヘッドレストは、シートと一体型ですが、かなり座高が高めでもしっかりと頭を支えてくれます。
エンジン始動はキーレスプッシュスタートシステムです。ボタンはステアリングの向かって右側にあります。
エンジンを始動すると「ブォォォ~ン」というちょっと勇ましさのある音が聞こえてきて、中々雰囲気があっていいです。

ステアリングですが、握り部分が細めな印象を受けました。
また、本革巻のようですが触り心地の質感があまり良くない印象を受けました。

各種フィーリング
アクセル
アクセルペダルは若干ながら重ためになっている感じがしました。
アクセルペダルに対する加速感については、とても自然です。CVTよりも加速感に違和感はありませんし、ダイレクト感もあるように感じます。ただ、この部分はミッションが「AGS」ということもあり、そこの絡みで違和感があります。詳細は後述します。

ブレーキ
ブレーキですが、フィーリングとしてはかっちりまではいかずに、薄いスポンジが挟まったような感覚でしょうか。ごく一般車的なフィーリングに近いです。
また、ブレーキを踏んでいる時に、足の裏に伝わってくる感覚や制動感がほとんどありません。
ブレーキのストローク量は適度なところでしょうか。
他の国産車に慣れていると、その感覚でブレーキを踏むと「あれ、効かない」と感じる部分があるかも知れませんし、最初は注意が必要かも知れません。しっかり奥まで踏む必要があります。
この辺りはスズキのスペーシアに近い印象を受けます(ただ、スペーシアよりもだいぶ改善されている感じです)
これについては、ブレーキのストローク量もそこそこあって、ストローク量で制動力をしっかりコントロールできることにも繋がるので、慣れてしまえばこちらの方が自然なブレーキ操作が行えるような印象を受けました。

ステアリング
ステアリングは適度な重さだと感じました。軽いという印象はありませんでした。低速から高速まで一定の重さを維持している感じでした。
応答性については、中立付近に若干ながら「遊び」がある感じがします。とは言うものの、このくらいの方が運転は誰にでもしやすいのではないでしょうか。いいバランスだと思います。
カーブなどでのフィーリングについても、ごくごく自然的な曲がり方をして、とても運転はしやすいように思います。ロールも試乗コースの中ではあまり感じませんでしたので、ロールを抑えることで「スポーティ」感を出しているところもあるように感じます。
インフォメーションも適度に感じられるのが好印象です。
ステアリングの握り部分が細い、という以外は中々好印象でした。

AGSについて
アルトターボRSのミッションは「AGS」のみの設定です。インタビューでも、ターボRS用として力を入れていることが伺えます。

「D」モードについて
Dモードについては、アクセル操作に対する加速感は自然なものの、変速時に速度が「抜ける」部分があり、抜ける時間が割りと長く感じてしまいます。
MTでも変速時は速度が「抜ける」訳ですが、MTだと自分で操作するので、特に何とも感じないのですが、これがオートで行われると、その「抜ける」時間が妙に長く感じてしまう印象がありました。
それと、変速ショックが結構あります。頭が若干前後するくらいのピッチングが出ます。
また、変速時はどこかで「ガシャガシャ」といった変速しているような音も聞こえます。
CVTに乗り慣れている人だと、この感覚にとても違和感を覚えるのではないでしょうか。

フィアット パンダもマニュアルミッションがベースのシングルクラッチ式2ペダルですが、こちらは変速ショックや速度が「抜ける」ことも殆どなく、非常に好印象だったのですが、これと比較するのも難ですが、かなり差を感じます。
スズキにとってはまだまだ発展途上の機構だと感じます。
ですが、この変速時の妙な違和感も、購入して乗り続けていれば慣れてしまうだろうなぁ、というレベルであるとも感じます。

良い点として、アクセルの踏み込む具合によって変速するタイミングが変わるのはたいしたものだと感じました。
ゆっくり加速する時は、早めに変速していきますが、踏み込み量が多いときは、結構引っ張ってから変速してくれます。
この辺りのセッティングは結構頑張っているのではないでしょうか。

マニュアルモードについて
マニュアルモードは、ステアリングの後ろにあるパドルシフトでの操作と、シフトレバーを上下に倒して操作する方法の2つがあります。
パドルシフトは向かって右側が「シフトアップ」、左側が「シフトダウン」です。
シフトレバーは「D」から左に移動させることで、マニュアルモードになります。
操作は下側が「シフトアップ」、上側が「シフトダウン」です。
下側に操作してシフトアップという操作は、マツダやBMWなどと同じですね。

Dモードでは正直印象が悪かったAGSですが、マニュアルモードではだいぶ印象が異なりました。
操作に対する応答性が中々いいです。
操作してから半テンポするかしないかくらいで変速してくれる感じで、これは他のクルマと比べても結構早い応答性だと感じました。
変速時は、一度アクセルを離した方が変速ショックも抑えられることもあり、この操作方法が理想的なんだろうなと感じましたし、ディーラーの営業さんにもそう言われました。
(アクセルを踏んだままでも変速できますが、そうすると変速ショックがかなりキツく、あとは「キュキュッ」とどこかで音がします。タイヤの音なのか、AGS機構の音なのか分からなかったですが(^_^;)
アクセルの離し方、踏み方によっても変速ショックに大きな差が出るのも特徴的で、これはある意味MTに近いか、それ以上に技術が必要な感じもしました。

この変速が上手に出来るかできないかで、変速ショックだけでなく、その後の加速にも大きな差が出るものとも感じられ、ある意味テクニカルな側面も感じられます。

それと、アクセルペダルに対する加速感も、MTに非常に近いというか、ほぼ同じようなフィーリングを得られるのもAGSの特徴でしょうか。CVTではこうはできないと思います。

このAGS、一見2ペダルの味気ないものと思われがちですが、MT同様に非常に奥の深さのあるものに仕上がっているように感じられ、追求していくととても面白いんじゃないかなぁと感じました。

ブリッピング
シフトダウン時には、ブリッピング(エンジンの回転数を上げてから変速)してくれるので、シフトアップと比べてシフトダウンでは変速ショックも少ないものに仕上がっています。
軽自動車で、ブリッピングまでする車種って今までなかったのではないでしょうか。キャリィや素のアルト(AGS)は、シフトダウン時、どうなんだろうかと、妙に気になってきてしまいました。

エンジンと加速
加速については、車体の軽さもあるのか、アクセルをしっかり踏んだ時はかなりの加速感があります。やはりマニュアルモードの方が加速時のフィーリングなども印象が良いように感じます。
とにかく法定速度まではあっという間にいってしまいます。
エンジンはターボですが、ワゴンRなどと同じようにごくごく自然な加速感の得られるものになっており、昔ながらの「ターボ」という印象はほとんどないとも言えます。
トルクの太いNAのような感じであり、操作する方としては非常に乗りやすいエンジンに仕上がっていると思います。

回転数を上げていっても、ターボながらスムーズに吹け上がっていくのも印象的で、600回転近くまでは自然な感じで「スー」っと回る感じがありました。
加速時のエンジン音については、素のアルトと比べるとかなり洗礼されたものになっていますが、スポーティなのか、豪快なだけなのかの境い目のような音だとも感じました。
なので、人によって「いい音」と感じたり「うるさい」と感じる人が分かれそうな感じです。

個人的には「あっいい音かも」とか「ん?やっぱやかましいだけか?」と、印象が行ったり来たりしていたかも知れません(^_^;)

それと、アイドリング時のエンジン音については「ガラガラ」とした音が聞こえてきます。この辺りは他の軽自動車と同様な感じがありました。

クリープ現象とアイドリングストップ
ATと同じように、ブレーキを離すとするすると前に進むクリープ現象があります。このあたりはAT乗ってる人も違和感があまりないのではないでしょうか。上手に作ってあると感じました。
アイドリングストップについては、試乗した限りでは、完全にクルマが停止してからエンジンも止まっていたように感じます(ごく低速で走っていたり、停止寸前ではアイドリングストップは動かなかった印象です)
それと、マニュアルモードでは、アイドリングストップは機能しないとディーラーの人が言っていました。

乗り心地
乗り心地については、こういったクルマに求めるものではありませんが、ゴツゴツしている感じが常時あり、決していいものではありません。
ちょっとした段差での突き上げ感もそこそこ感じられ、乗り心地も含めて、運転席でこういう印象だったため、後部座席はもっと乗り心地などは悪いのではないかと思います。

燃費
試乗距離5kmくらいで、平均燃費は「13km」くらいだったと思います。
マニュアルモードを多様したり、無駄に加速したりしていたのでこのくらいだと思いますが、普通に運転したり、エコ運転を心がければCVTの車種よりも実燃費はカタログ燃費に近いものが出るのではないでしょうか。

内装、その他
内装については、全体的にブラックで統一されていたり、赤いステッチを入れたりで「雰囲気」をしっかり演出しているのは大したものです。
質感については、ベースがアルトということもあって、安っぽいです。

また、運転席に座り、ドアを閉めた時の音が妙に軽い感じです。窓が開いていたこともあるかもしれませんが、この辺りにも軽量化の波が来ているのでしょうか。横からの衝突時など大丈夫なのかとちょっと不安になりました。

アルトターボRSまとめ
さて、アルトターボRSですが、特徴的だったAGSについては「D」モードでは違和感がかなり強く「なんだこれは」と思いましたが、マニュアルモードでは見直しました。
マニュアルモードでは、テクニカルさも要求される奥の深さや独特の味があるように感じました。

全体的な走行性についても、そこまで「尖った」作りはしていないし、そういう方向には向いていないんだろうなぁということも感じられました。
ある意味、スズキのスポーティカーの今後の考え方を象徴しているかのようにも感じられた部分でもあり、根底にあるのは「運転って楽しい、クルマにもっと興味を持ってもらいたい」といったメッセージがあるのかなぁと感じました。
そのためにも、間口を広く持たせた形で、アルトターボRSは誕生したのかも知れません。
その辺りが、抑えられた車両価格であったり、AGSのみのシンプルな設定という面で表れているのかも知れません。

スズキのエンジニアの人たちは、かなり本気で、かつ大真面目に、アルトターボRSを作りこんでいるようにも感じられ、それでいて129万円~という価格設定にも、熱いものが感じられるように思いました。

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